「自然観察園」は、世羅台地で見られる多様な動植物を保全し、その観察や育成活動を通じて、自然のなりたち、生きものの不思議を学ぶことができる自然学習フィールドです。
世羅台地で見られる多くの動植物が生育・生息できる環境づくりに取り組み、人と自然を大切にする心を育むことを目的にしています。
自然観察園は、アカマツを主体にした樹林地と、その樹林地に囲われて南側に開けた細長い谷で構成されています。谷に棚田状に連なっていた田んぼの跡地の地形を活かし、石積みや防水をやり直して湿原やため池を造成しています。このようにして、樹林地や草地、ため池、湿原、田んぼが連続的につながった環境をつくり、世羅台地で見られる多くの動植物が暮らすことができる場所として育成しています。
田んぼの水源として、古くから人々はため池をつくって利用してきました。ため池は多くの生きものが成育場所や繁殖場所として利用しており、世羅台地の自然を特徴づけています。園内には5つのため池がありますが、水深に変化を持たせ、また山とのつながりを確保することで、多様な動植物が生育・生息できるようにしています。
世羅台地の湿地は、貧栄養な水がしみ出ている浅い谷間の緩やかな傾斜地に広がっています。サギソウやモウセンゴケなど特有の植生が発達し、絶滅が心配される”湿地の蝶”ヒョウモンモドキも生育しています。園内の湿地植生は、世羅台地内の消えつつある湿地から少量づつ移植してきたもので、多様な湿地の動植物を保全・育成することを目指しています。
田んぼには多くの生きものが暮らしています。昔の田んぼは「ひよせ」と呼ばれる小さな水路に冬場も水がたまっており、水生昆虫の越冬場所、カエルやカスミサンショウウオの産卵場所となっていました。ここでは、様々な田んぼの生きものや、湿生植物の美しさを楽しむ環境づくりを目指しています。
古くから人々は生活に必要な燃料や肥料、牛馬の飼料として山林や畦畔から薪や落ち葉、刈草を採取し利用してきました。こうした人々の営みが、明るい林床や草地を維持し、多様な動植物を育んできました。園内でも定期的に草刈りなど行っています。
★印:将来的に園内での生育・生息を目指すいきもの。
写真提供:ヒョウモンモドキ保護の会